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ME3とは? | MeKiKi

MEさん

 『ME3』は無く、『ME2』や『ME1』もありません。

 読み方の間違いで『エムイーさん』という職種を呼ぶときに使われる音声言語です。

 このときの『ME』(エムイー)は『Medical Engineer』を意識していると思いますが、看護師さんらは単に『ME』という言葉を覚えているだけの人も多いです。

 看護師さんが使う言葉なので、『MEさん』は医療関係者です。




主に臨床工学技士さん

 病院で『MEさん』と呼ばれて仕事をしている人が居るとすれば、おそらく臨床工学技士という職種です。

 臨床工学技士とは、1987年(昭和62年)に法制化された比較的新しい医療の国家資格(免許)です。
 免状が交付されますので、その範囲内で許される業務があります。例えば人工透析患者のシャントと呼ばれる血管への針穿刺は免許された業務です。医師や看護師にも許される行為ですが、無免許で針を刺すと傷害罪などに問われます。




ME/CE/Tc

 『MEさん』と言われれば臨床工学技士さんですが、臨床工学技士を呼ぶ略称は他にもあります。

 日本語では『臨工』(りんこう)と呼ばれる事があります。学会も『日臨工』(にちりんこう)と呼んだりします。

 英語の略称で選択的に使われるのが『CE』です。
 『Clinical Engineer』の略称として使っています。

 『clinical』は『臨床の』と訳されますので、臨床の工学者、つまり臨床工学技士とつながります。

 臨床工学技士法により、臨床工学技士には『名称独占』が与えられています。『ME』や『CE』は誰でも名乗れますが、『臨床工学技士』を名乗るには、臨床工学技士免状が必要です。

 『Tc』とは『Technician』の略称で、和訳すれば技術者です。




Technician or Therapist

 『Therapist』は『療法士』あたりがちょうど良い和訳かと思います。

 リハビリの技士さんは『PT』(Physical Therapist)が理学療法士、『OT』(Occupational Therapist)が作業療法士、『ST』(Speech Therapist)が言語聴覚士の略であり、皆さん『T』(Therapist)です。

 臨床で働くEngineer『CE』『ME』さんは、単なる技術員ではなく患者や臨床を見る事ができる事に特別な意味を込めていると思います。

 原則として『医師の指示の下』で医療機器を操作します。指示通りに正しく動かして、適正に診療に用いられるための支援が臨床工学技士の仕事であり、医療機器使用を自ら判断する事はできませんし、設定変更も勝手にはできません。
 そうした面から『Therapist』を名乗っていないのかもしれません。

 象徴的なところで言えば、職場で臨床工学技士同士が『○○先生』と呼び合う姿は見る事がありません。

 テクニシャンと呼ばれている職場はあるようです。これは免許制定前からの歴史も関係していると見られます。
 法制化が昭和の終わり、その後の移行期間なども経て養成校1期生が卒業するのが1990年代です。

 法制化前には色々な歴史や事件があり、その時代から臨床工学技士らしき仕事をしてきた人たちはときに『Technician』と呼ばれていました。
 免許が無ければ治療行為には参画できないため、技術を提供する要員としてテクニシャンが透析室などで常勤していました。

 いくつかの透析施設で勤務表などに『Tc』『テク』などと書かれている物を見たことがあります。




職業が1つ

 米国などではtechnicianとtherapistは明確に分けられており待遇面でも倍ほどの報酬格差があると言います。

 米国でphysical therapist(PT)と言えば、大学院卒や実務経験などを要する医療免許、まさにtherapistです。
 そしてrehab technicianと言えばPTのアシスタントです。治療にも関わりますが物品準備や環境整備、予約管理、患者の移動支援などtherapistの資格が要らないリハビリ業務を担当します。

 日本においては『PT』の資格は1つであり、アシスタントが配置される事があっても患者に触れるようなリハビリ業務には携われません。

 臨床工学技士も資格は1つなので、technicianとtherapistもありません。透析室などでは多くの雑務をこなすので、テクニシャンもアシスタントもセラピストも、何でもこなしています。

 臨床工学技士には業務独占が無く、極端に言えば免許が消滅しても臨床上は誰かがカバーできる職種であると考えられます。
 ゆえに、臨床工学技士の上位職を設けるという議論には及ばず、上位職を作るとすれば看護師免許を取得して工学系大学院に行き、工学好きの看護師を養成すれば事足ります。
 手っ取り早くするならば、工業高校卒業後に看護大学に行き看護師免許を取得、これで工学に明るい医療有資格者の誕生です。

 臨床業務としては看護師が臨床工学技士の業務とオーバーラップします。
 付け足すと、看護師には臨床工学技士にはできない業務範疇があるので、看護師一人でだいたいの事が完結できてしまいます。




MEの養成課程と生涯教育

 臨床工学技士の養成課程では基礎的な医学の他に、工学系の単位取得が求められます。

 この専門教育がMEさんを基底します。

 看護師さんでも同様の教育を受ければ、免許は看護師だが業務として『MEさん』の仕事をすることができると思います。

 養成課程も重要ですが、生涯教育も重要です。
 医学は日進月歩、医療機器も進化し多種多様な医療機器が現れます。
 30年前の臨床工学技士国家試験にはおそらくAEDも内視鏡も設問が無かったと思いますが、今ではこれら機器に関わらないMEさんは少ないと思います。

 生涯教育を多職種でシェアしていけば、多職種でMEを名乗る事もできると思います。
 現実としては、ほとんどが臨床工学技士、臨床工学技士以外の職種が医療機器に精通しようという動きがないので、当面はMEさんと呼べば臨床工学技士が振り向くという状況が続くでしょう。




学位

 臨床工学技士は専門学校卒でも国家試験受験資格を得られるため全員が学士以上という薬剤師や医師らとは異なります。
 すなわち、全員が学士/修士/博士のいずれかの学位を授与されている訳では無いです。

 もし、ME系で学位を取得するとすれば、下記のような名前の学位を取る事になります。

 学士については『Clinical Engineering』か『Medical Engineering』かというあたりが意見が分かれている感じです。

学士

臨床工学Bachelor of Clinical Engineering
B.S. in Medical Engineering
Bachelor of Clinical Engineering Technology
Bachelor of Medical Engineering
Bachelor of Science in Clinical Engineering
Bachelor of Science in Medical Engineering
生命工学Bachelor of Life Science and Biotechnology
Bachelor of Biotechnology
生体医工学Bachelor of Clinical Engineering
医用生体工学Bachelor of Clinical Engineering
医療工学Bachelor of Medical Engineering
医療情報工学Bachelor of Medical Information Science
学士の称号

修士

臨床工学Master of Science (Medical Engineering)
医工学Master of Biomedical Engineering
医療工学Master of Medical Engineering and Technology
生物工学Master of Biotechnology
医理工学The Degree of Master of Biomedical Science and Engineering

博士

医工学Doctor of Medical Engineering Science
Doctor of Philosophy (Biomedical Engineering)
Doctor of Philosophy (Medical Engineering)
医療工学Doctor of Medical Engineering and Technology
生命工学Doctor of Philosophy (Bioengineering)
生物工学Doctor of Philosophy in Biotechnology
光医工学Doctor of Medical Photonics
Doctor of Philosophy in Biotechnology
医理工学The Degree of Doctor of Philosophy



おわりに

 今回はMEさんについて取り上げました。

 MEさんの正体は、だいたい臨床工学技士さんというのが正解でした。

 臨床工学技士免状を持たずにMEさんの仕事をしている人も稀ですが居ると思います。

 臨床工学技士さんが自らを『ME』と名乗る場合もありますが、『CE』と名乗る人が多いという事も付け加えておきます。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました。