医療機器は医薬品医療機器等法(旧薬事法)によって、不具合が出た場合の対処が具体的に義務付けられています。
MeKiKiでは、医療機器の回収/改修情報をデータベース化しています。
医療機器の回収処理(医療機器製造販売業者)
医療機器製造販売業者が自ら製造販売した医療機器について、保健衛生上の被害の発生又は拡大の防止のため、市場からの製品回収が必要となった場合には、迅速かつ適切に対応する必要があります。
そのため、日ごろからQMS・GVP等の手順書及び管理体制を整備し、関連部署との連携体制を整えておくことが重要になります。
関連資料
厚生労働省:医薬品・医療機器等の回収について, 厚生労働省医薬食品局長, 薬食発1121第10号(平成26年11月21日)
厚生労働省:「医薬品・医療機器等の回収について」の一部改正について, 厚生労働省医薬・生活衛生局長, 薬生発0208第1号(平成30年2月8日)
(上記通知について、以下「回収通知」という。)
厚生労働省:「医薬品・医療機器等の回収について」に関するQ&Aについて, 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課長通知, 薬食監麻発1121第5号(平成26年11月21日)
回収処理の流れ
(1)情報の入手
- QMS上の製品の品質等に関する情報及び、GVP上の安全管理情報などを入手
- この時、適切な情報が迅速に入手できるよう、日頃から連携体制を整えておくことが重要
- 具体的には、QMSにおいて関係施設及び登録製造所と必要な事項(速やかな連絡方法や責任者等)を取り決めることや、GVPにおける安全管理情報の流れにおいて、担当者や連絡期限等を明確に定めること等が必要
(2)情報の分析
- (1)で入手した情報についてどういう種類の情報なのか整理し、それぞれに対して分析を行う
(3)回収の必要性の判断
- (2)の分析結果及び関連法令や通知等に基づき、回収の必要性についての判断を行う
- 回収の必要性の判断については、回収通知の第2において示されている、次の事項がポイントになります。
有効性及び安全性の観点からの判断
製造販売した医療機器の不良に関して有効性及び安全性に問題がないと明確に説明できない場合には回収の対象となる
医薬品医療機器等法違反又は承認事項からの逸脱
医薬品医療機器等法違反又は承認事項から逸脱する医療機器は回収の対象となる
不具合範囲の特定に関する判断
当該不具合がそのロット又は製品全体に及ぶものではないと明確に説明できない場合には回収の対象となる
混入した異物の種類と製品の性質の判断
異物が混入又は付着しており、保健衛生上問題が生じないことが明確に説明できない場合には回収の対象となる
(4)回収の決定
- 製造販売業者は(3)の判断に基づき、回収を行うこと、若しくは回収を行わないことを決定
- 回収を行うことを決定した場合には、国内品質業務運営責任者等が中心になり、関係する部門に必要な措置を速やかに行わせる
(5)都道府県薬務課への報告
- 回収を行うことを決定した場合は、医薬品医療機器等法第68条の11に基づき速やかに報告。
(6)「回収の概要」掲載・回収着手報告書・報道発表
- 回収を決定したら、以下の書類を作成し、前項報告先へ提出
医療機器回収の概要
医薬品医療機器総合機構のホームページ「回収情報(医療機器)」に掲載される内容
テンプレート
PMDA:回収情報テキストファイル作成テンプレート(医療機器)
回収着手報告書
報道発表用資料
クラス1回収の場合
- 上記書類の作成においては、以下の事項がポイント
- 第三者が読んでもわかるよう、詳細に記載
1.クラス分類
回収のクラス分類の考え方は、回収通知の第2において示されている次の事項がポイントとなる。
○安全性と有効性の両者を勘案し、総合的な「健康被害」としてクラス分類を行う
○基本的にクラス2と考える
○健康被害発生の可能性及び重篤度のバランスにより、クラス1、クラス3となる
2.回収範囲(対象ロット、数量)
回収漏れによる保健衛生上の問題の拡大を防ぐため、不具合品を確実にカバーできるような範囲を設定する。
その際、不具合に至った原因を明らかにすることが重要になる。
3.危惧される具体的な健康被害
どんな健康被害が発生したか(時、場所、件数)、または発生しうるか、納入医療機関や、製造元との連携を密にして情報を集め、検討する。
(7)納入施設への情報提供・回収措置
- QMS手順書等の回収処理に関する手順に基づいて、関係部門との連携のもと、回収作業を行う
- 実際の回収作業を開始するのに時間を要する場合、その間に保健衛生上の問題が拡大しないよう、予め納入施設に対して、不具合の発生を回避する方法や、不具合が起こった時の対処方法などの情報を提供する
- 回収を行う中での報告や、必要に応じた相談、回収品の確認、立ち入り調査などの所掌は都道府県薬務課に確認
- (5) (6) (7)は並行して行う
(8)回収終了
- 回収対象の回収が漏れなく終わったことを確認する
- 回収品については、都道府県が実地に確認しに行くことがありる
- 自主的な判断で、破棄や返送する前に都道府県に連絡
(9)回収終了報告書
- 回収が終了したら、「回収終了報告書」を作成
- 都道府県の報告先に提出
- 回収終了報告書の作成にあたっては都道府県担当部署と相談のうえ、指定された様式で作成
- 第三者が読んでもわかるように、詳細に記載
作成におけるポイント
1.回収結果
予め設定した範囲を漏れなく全て回収できたか、収支を記載する。
2.再発防止策として特に自社内で講じた措置
不具合が起こってしまった根本的な原因を考慮し、今後このような不具合が起こらないようなシステムや組織体制を構築するにはどうすればよいかを、具体的に記載する。
「回収終了報告書」が提出され、回収作業が終了したことが確認でき次第、「回収情報(医薬品医療機器総合機構のホームページ)」の備考欄に「回収終了」の文字が入る。
(10)回収品廃棄等処理終了報告書
- 回収終了報告書の提出後に、回収品の廃棄等の措置を行った場合は都道府県担当部署に報告
薬機法に関する基礎知識
東京都健康安全研究センターでは『東京都医薬品医療機器等法Web講習会(医療機器・体外診断用医薬品)』と称してスライドと動画で薬機法の説明をしてくれています。
医療機器等許可・登録関係 (申請に関すること)
医薬品等電子申請ソフト入力ガイド編(外字登録について)
FD申請ソフトによる医療機器製造販売業許可更新申請書の作成
FD申請ソフトによる医療機器製造業登録更新申請書の作成
医療機器等調査関係
東京都における医療機器製造販売業の許可更新調査について
QMS体制省令①(省令要求事項)
QMS体制省令②(限定第三種医療機器製造販売業者)
QMS体制省令③(QMS体制省令確認事項①)
QMS体制省令④(QMS体制省令確認事項②)
GVP省令について 1 GVP省令の要求事項(第3種医療機器販売業者向け)
GVP省令について 2 安全性情報の収集・検討
GVP省令について 3 安全確保措置の立案・実施
医療機器回収/改修DB
MeKiKiの医療機器回収/改修情報データベースです。
おわりに
医療機器の回収/改修情報は、第三者にもわかりやすく書くように指導されているので、言葉は平易であることが多いです。
ただし、内容としては『医療従事者が怠らなければ不具合で健康被害は起こらない』という論調が多く、現場では違和感を感じる人も少なくありません。
誰のための文書、誰のための回収であるのか、ここに臨床家が関与して行った方がよいのではないかと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。