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国勢調査で10年後を占う? | MeKiKi

国勢調査

 日本国内の人、および世帯の実態を把握するために実施される調査です。

 大正9年の第1回から令和2年の第21回まで100年の歴史があります。




最新は2020年(令和2年)10月1日0時

 最新調査は令和2年度に行われた調査です。その記録は令和2年10月1日零時の時点の人口として記録されています。

 調査した日に生まれていても、10月1日零時に生まれていなければこの国勢調査の人口にはカウントされていません。




調査項目

 令和2年国勢調査では下記19項目が調査されました。

 施策に反映されるデータですので性別や年齢は必要になると思います。
 性自認がどうなのか、年齢に対してどのような生活を送っているのかなどはまた別な調査になると思います。

  • 氏名
  • 男女の別
  • 出生の年月
  • 世帯主との続き柄
  • 配偶の関係
  • 国籍
  • 現在の住居における居住期間
  • 5年前の住居の所在地
  • 在学、卒業等教育の状況
  • 就業状態
  • 所属の事業所の名称及び事業の種類
  • 仕事の種類
  • 従業上の地位
  • 従業地又は通学地
  • 従業地又は通学地までの利用交通手段

【参考】総務省統計局:令和2年国勢調査の概要




本題の『10年後』

 国勢調査では年齢別の人口がわかりますので、概ね60歳くらいまでの年齢の人は、10年後は10歳スライドした位置に来ると考えられます。

 不明なのが0~10歳の子供達、すなわち出生数です。

 そして高齢者です。現在60歳以上の人は10年後は70歳以上、どのくらいの高齢者がご存命であり、ご存命の方々どのような暮らしをしているのか、健康長寿は社会実装されているのか、といったことは未来にならないとわかりません。

 高齢者について未知数なところはありますが、現在の医療水準などから鑑みて、ある程度の予測はできます。




経済動向は健康に影響!?

 経済が医療や健康に及ぼす影響は最小化されるべきというのは理想論ですが、現実は経済状態は強く影響されます。

 現在の日本の医療制度、社会保障制度で言えば医療機関の窓口負担は1~3割です。
 高額療養費制度を使うことで窓口負担から更に減額する措置が取られます。
 100万円の手術を受けても多くの国民が10万円以下の負担になります。

 この負担額を減らす仕組みは保険や税金ですが、その財源が無くなれば医療費の国民負担は増す事が想定されます。

 『国民負担』という考え方には色々とあります。




瞬間を切り取るか、長期積み立てか

 かつての人口構造や経済成長の中では、現役世代が高齢世代を支える構図でも成り立っていました。

 例えば70歳の人は、70歳の人同士で貯めたお金で医療を受けるという考えではありません。
 国民皆保険制度では、簡単に行ってしまうと全国民で保険料を出し合って、全国民を被保険者(加入者)として守る制度です。

 多くの経済活動は受益者負担、高級車に乗りたい人は相応の対価を支払います。お金がある人は食べたい物を食べられますが、無い人は食べられる物を食べます。そこに格差は存在します。

 国民皆保険制度では、誰もが同じ水準の医療を受け、保険証1枚で窓口負担は割り引かれます。

 財源については、過去に国民から預かった保険料がいくらだから、今年は何兆円の医療費が限界です、という制度ではありません。
 去年はこれだけかかったから、この4月からの保険料はいくら徴収しますといった、瞬間を切り取る制度になっています。
 筆者の負担は令和2年3月分は11.93%、令和3年3月分は12.04%、令和4年3月分は11.77%でした。給料から1割以上を取られるのも大きいですが、この短期間で0.27%も変動しています。

【参考】協会けんぽ:都道府県毎の保険料額表

【参考】厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ




保険負担の限界

 保険負担は、健康保険と介護保険を合わせて報酬の12%前後、厚生年金は18%程、合わせて30%程が社会保険料として徴収されています。

 企業に勤める人であれば半額を個人負担、残る半額を企業が負担しているので給料明細では15%程が引かれていると思いますが、見方を変えれば勤め人として稼いだ企業の収入が、社員の給料にならずに保険料として徴収されているので、会社の財布を他人事と考えない人にとっては30%の重みはズシリと来ます。

 景気が悪く成れば残業が減り、売り上げが減り、所得が減っていきます。
 所得に応じた保険料徴収ですので、国民の所得が1割減れば、保険料収入も1割減ります。

 収入が1割減ったからといって医療水準を1割下げる措置はありませんし、受診を先着順や抽選で1割落とすという措置もありません。窓口負担を増額する制度もありません。

 足りない分はどうするかと言えば、保険料総額として帳尻が合うように、被保険者(加入者)から集める額を増額するしかありません。

 言い換えると、この人は月1万円とみなされてしまうと、給料が半減しても1万円を集めないと保険制度が破綻してしまうので保険料率を上げて1万円徴収することになってしまいます。




10年後の85歳

 総人口は減少幅が大きくなることが予想されます。

 一方で団塊世代と呼ばれる第二次世界大戦後の第一次ベビーブームがあった1947年生まれは2032年に85歳になっています。

 1年に250万人以上が生まれた世代が、高齢を理由に亡くなる方が居るとしても、85歳の人口は今年と比較にならないくらいの数になると予想されます。

 国勢調査があった2020年10月1日現在、1947~1949年頃に生まれた71歳が205万人、72歳が201万人、73歳が189万人でした。

 同日の81歳は101万人、82歳は104万人、83歳は103万人でした。
 この方々の10年前(2010年)の人口を見ると、71歳が129万人、72歳が137万人、73歳が140万人でした。
 変化率で言うと78.4%、76.2%、73.9%です。

 この変化率を現在の71~73歳に当てはめて10年後の81~83歳の人口を推算すると161万人、153万人、140万人となります。
 3歳合計で言えば今より146万人も多くなる推算です。




医療を享受されない高齢者!?

 75歳以上の人口が多くなることはよく聞きますが、85歳以上の人口が今より100万人以上増えることは、どのようなことを意味するでしょうか。

 20万人が毎月1千円分の保険料を使うと毎年24億円です。
 1万人が100万円の手術を受けて保険を使えば100億円です。
 総数ではなく、現在より何人増えるかという話なので、いまの保険料負担に更に上乗せでこれだけの予算確保が必要になります。

 生産年齢人口は1千万人近く減ると言われています。もし1千万人減った一方で、医療費が年数千億や数兆円も増えると、案分される保険料負担は相当に重くなります。

 現在の制度で言えば後期高齢者医療制度と健康保険制度は分けられています。
 比較的若い世代が加入する健康保険制度は、医療を必要とする人が少ない分、安価な保険料で運用することができます。
 他方、保険料収入が少なく支出が大きい後期高齢者医療制度については、若者の保険制度からの拠出金が絞られることで収入減となり、その予算内で支給できる医療に制限がかかる可能性があります。

 高額な医療から切られるのか、湿布薬など安価な医療から切られるのかわかりませんが、提供される医療に制限がかかることは想定されることです。




完治や根治は高嶺の花か?

 現在の日本の医療では完治や根治を目指すものが多く、抗癌剤も次々と保険収載されています。

 がんの根治を目指さず疼痛緩和や進行抑制を優先する治療法もありますが、それが強制される訳ではなく根治か緩和か選ぶことができます。

 医療費が逼迫すれば、根治を目指す治療法に待ったがかかる可能性があります。

 根治した先に何があるのか、という結果重視の医療という考え方が出てくるかもしれません。

 スポーツ選手が大手術を受けて現役を続行するというニュースがときどきありますが、まさにあのような決断です。

 何千万円もかけて肘を手術して、辛いリハビリにも耐えて、やっと練習に戻れてもプロとして通用するためには更なるトレーニングが必要になります。費用対効果は未知数です。
 普通の生活をする分には問題が無い肘の状態、多少の痛みは薬で和らぐということであれば手術を受けずに引退するという選択もできます。消炎鎮痛薬であれば保険がきくかもしれないので窓口負担は3割、数百円程度です。

 ペースメーカーやステント、人工骨置換、人工透析、いずれも数百万円や数千万円の医療費がかかります。
 これらがすべて保険収載から消えるという事は無いかもしれませんが、条件付きの保険適用にならざるを得ないほどの経済状態になるかもしれません。




たった10年で

 たった10年でそこまで変わるのか、とお考えの方も居られると思います。

 筆者も、わずか10年でそこまで変わるのかと思っていますが、かつてのバブル崩壊、リーマンショックといった経済危機はまた起こっても不思議ではありません。

 日本が戦争を仕掛けなくても、日本が戦地にならないとは限らないので、たった数日の戦地化でも失うものは大きいと思います。

 『ペンは剣よりも強し』という言葉がありますが、SNSが発達したいま、若者の保険料負担について大きな反響を呼ぶ投稿や著書が出るかもしれません。
 次の衆議院議員選挙で30歳代の候補者が乱立しているかもしれません。

 10年もあれば、大きな変化が生まれるかもしれません。




医療・ヘルスケアビジネスと10年後予想

 国勢調査だけで10年後がわかる訳ではないのですが、もし10年後に医療が大きく変わると予想するのであれば、それに応じたデバイスやサービスを考えるべきです。

 もちろん事業として売上を出して利益を獲得するためにビジネスは創生すべきですが、社会的意義も考えて良いと思います。

 団塊ジュニア世代あたりは明日は我が身、自分たちが医療を必要とするような年代になったときに、十分な医療を受けられるように今からデバイスやサービスを創っておくと良いです。

 もっと若い世代は、これ以上の保険料負担を強いられないように、あるいは保険料負担をしても、消費された先で自分たちのサービス等が利用され、売上として還元される仕組みを作っておけば経済は循環します。

 立場や視点が違えど、同じところにフォーカスすればコンソーシアムも組みやすいと思います。




我慢する健康とは?

 いま、頭痛や胃痛には市販薬でも対処する人が多く居ます。

 関節痛に効果がありそうなサポーターやサプリメントのCMが頻繁に流され自己完結させようとする人が増えています。

 根治を選択しない医療が定着すると、多少の痛みや不便とは共存する生活が訪れます。
 現在の『健康』とは概念の異なる『健康』が生まれる可能性があります。

 新たに『正しい我慢の仕方』というレッスンやエクササイズが生まれるかもしれません。

 疼痛ケア外来には患者が殺到するかもしれません。

 ロキソニンのような消炎鎮痛剤も、症状別に細分化されるかもしれません。




妥協する健康とは?

 痛みと共生するのと同じように、多少の障害も受け入れて行くことになると考えられます。

 視力が低下すれば眼鏡を掛けるのと同じように、手指や足腰の動作が悪くなってくれば、補助する便利グッズを多用するかもしれません。

 便座に座る、ベッドから起き上がる、こうした些細な行動のためだけにヘルパーさんを呼ぶのは不経済ですので、小さな介助を求めるか、介助なしに活動できるように身体側を補強すると良いと考える人が居るかもしれません。

 根治は求めず、妥協して生活を続ける人のニーズを満たす商品は安定した売り上げが期待できると思います。




企画2年、開発3年、改良3年でギリギリ

 おおよそのニーズを探し、ニーズを充足するソリューションを企画するだけでも相当な時間がかかると思います。

 商品コンセプトなどを評価し、開発する物が決まれば、当面はプロトタイピングをしながら商品化を目指します。

 例えばターゲットが80~85歳であれば、常に80~85歳のユーザーに連携を求め、80~85歳の人口が増える時期に備えます。

 市場シェア率が5%であっても、同世代の人口が2倍に増えれば売り上げは2倍です。
 先進的なアイテムで5年後に売り上げが僅かであっても、10年後には爆発的に売れているかもしれません。

 10年後を見据えた場合、最終段階の磨き上げられた商品を提供するためにはいま、調査や検討を重ねておかなければ間に合わないかもしれません。