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令和4年診療報酬改定 | MeKiKi

定例改定

 医科では2年に1回、診療報酬が改定されます。

 令和4年(2022年)はその改定年にあたります。

 この年の3月は医事会計ソフトの更新作業で医療機関は忙しくなります。




公定価格が変わる

 診療報酬改定とは、簡単に言うと公定価格の改定です。

 診療報酬制度下で行われる保険医療と呼ばれるサービスには、その対価を定めた点数表のようなものがあります。

 医療行為や医薬品などに細かく点数が付いていて、その点数が改定により変更されます。

 改定日を境に、昨日までは1,000点であったものが、今日から900点となっていれば、請求できるのは900点です。患者さんの窓口負担が3割であれば3,000円であったものが2,700円になります。

 制度開始以来、1点10円という交換レートは変わっていません。




上がるもの、下がるもの

 診療報酬改定は一律に上下するものではありません。

 今回の改定では医師の技術料が上昇傾向にあります。

 一方で、毎回のことですが薬は下降傾向にあります。実績ベースでの見直しということですので、開発費の元が採れたなら下げましょうという事でもあると思います。

 新規に収載されるものもあります。従来は保険として認められない、いわゆる自由診療の世界で扱われて来た医療が、収載されることによって保険が使え、自己負担は3割に下がります。




保険収載はメリット大半

 保険収載された診療材料や医薬品などは、保険を使えるようになる訳ですから消費される機会が増えます。

 日本は国民皆保険制度ですので、保険を使わずに医療を受ける人が非常に少ないです。

 ある診断が付いたときに保険医療で使えるお薬が4種類、保険を使わなければもう1種類あったとしても、有効性や安全性に大きな差がなければ保険外は選ばれる事は稀です。

 医療を受ける国民にとっても、1万円のお薬を3割負担か10割負担かで1回あたり7千円も負担額が違います。慢性疾患で毎月処方されれば、年間で8万4千円もの差額になります。




健康保険組合にとってのリスク

 保険収載の数少ないデメリットとして健康保険組合の負担増が挙げられます。

 保険が使える医療行為や医薬品が増えることによって、保険者側は保険リスクが高まります。

 従来徴収していた保険料では支払いきれないほどになれば、保険料を引き上げなければなりません。

 保険料引き上げは社会人にとって収入減につながります。
 毎月の保険料が2千円増えると、社員と会社は同額負担なのでそれぞれ1千円ずつ負担が増えます。大きな視点で言えば会社の売上金から2千円が減らされるような事になります。

 日本では診療報酬の点数表が一本化されているので、保険が公営であろうが民営であろうが、同じ額になります。
 『ウチはケガが多いのでケガだけ手厚く』という保険点数は認められていません。

 一本化ゆえに計算が簡単で事務費用は抑えられていると思いますが、希望していない医療行為にも点数が付けられる可能性があるので、保険者はリスクとして捉えておく必要があります。




健康保険組合の解散

 診療報酬の改定内容によっては、健康保険組合を解散する動きも加速されてしまいます。

 近年保険収載が増えている高額薬は解散の引き金になり得ます。

 高額薬処方で保険者が1千万円支出したとき、加入口数が10万人の場合でも1口100円の負担になります。
 年間10回処方されれば1口あたり1,000円、じわりと効いてきます。

 従業員の福利厚生のために運営されている企業立の健康保険組合では、健診の受診率向上や労災ゼロへの取り組みで保険を使う人を減らす努力をしても、少人数が高額薬を使うことで保険料を引き上げなければならない事態に陥るのであれば、病気になってしまった社員は肩身が狭くなります。
 社員の心理的な負担を考えても組合を解散し、心おきなく高額薬を保険で使って貰った方が良いと考えるかもしれません。

 実際、保険支出が負担になって解散する健保組合は増加しています。




改定の内容を知る

 診療報酬改定の内容については、厚生労働省にページが用意されています。

 断片的なトピックについては新聞記事を検索しても出てきます。

 また、学会ホームページや患者会機関紙などでは、ピンポイントでの分析結果も出されています。

【参考】厚生労働省:令和4年度診療報酬改定について

【参考】厚生労働省:診療報酬情報提供サービス




改定の経緯を知る

 改定の経緯は『中医協』と呼ばれる中央社会保険医療協議会の議事録などを追っていくとわかります。

 国の財政に関わりますので財務省の資料にもときどき掲載があります。

 読み方にもよりますが、財務省が総額として上限を提示して、厚労省が医療消費に合わせた伸びを認めるよう交渉しているのではないかなと思います。

 高齢化率は高まり、医療が必要な高齢者も増えるので、今後も医療費の伸びは不可避だと思いますが、国庫から出される社会保障費は税収が伸びなければなりませんし、医療を利用する機会が少ない生産年齢が納税に不快感を持たないようにしなければなりませんので、バランスに厳しい目が入る事になると思います。

【参考】厚生労働省:中央社会保険医療協議会

【参考】財務省:社会保障(2021年11月8日)




改定をビジネスに活かす

 診療報酬が高く付いている診療材料などを開発していくことはセオリーどおりという感じで問題ないと思います。

 あえて診療報酬が削られている分野に着目することも大事だと思っています。

 削られる背景には何か要因がありますし、もし既存メーカーが苦しくなり撤退となれば、一定規模の市場が空くかもしれません。

 あるいは、代替手段を提示することで新たな保険収載を狙うことができるかもしれません。

 特に遠隔医療が認められていく時代において、医科から物理的、時間的に離れる患者に対して、医療の質を下げないことが重要視されます。
 都会で要らなくても郊外や僻地には需要があるかもしれないデバイス類が存在すると考えられます。