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非協力的は法令違反!? | MeKiKi

金儲けは『悪』

 数年前、ある職能団体の地方会で講演を頼まれたので登壇することになりましたが、妙なトラブルに巻き込まれました。

 『医工連携』について『教育講演』ということでお引き受けしたのですが、『医工連携は金儲けだ』というレッテルを貼る方が意外にも多く居ました。

 何が起きたかというと『会場費○万円をご負担ください』ということです。
 こちらが講演をしてあげるのではなく、地方会の参加者が教育を受けるための機会について機会を与えるので、その機会にはお金がかかるという話でした。
 受益者負担が原則なのですが、ランチョンセミナーでもない場面で、講師が受益者として扱われたのは初めてです。




講演後にお叱り

 その地方会では費用負担をして講演を無事に終え、講師控室に行くと、地方会ではなく全国組織の理事長に出会いました。

 その場でも『医工連携は金儲けだ』という主旨の指摘を受け、『品が無い』といった主旨の指摘も受けました。

 同席していたお偉いさんが反論してくださったので、その隙に席を立ちましたが、いまだに医工連携は企業との癒着、私財を増やしたい奴の私利私欲の道具だという見方をする人が居ます。
 残念ながら、職能団体の幹部であってもその偏見は在るようです。




企業の宣伝?

 別の場面ですが、医工連携で医療従事者と企業が開発した製品について、その事例をお披露目する方法を議論する中で、その議論の場より上の方にある組織から『宣伝だ』『賛助会員なら許せるのでは』といった発言が飛び込んできました。

 もし、賛助会員であれば許されるとすれば、それはまさに広告宣伝の類いだと思います。いわば、賛助会員という『賛助』は名ばかりで、会の活動に賛同するか否かではなく、広告料として会費を支払っていることになります。




実は法令違反かも

 この広告宣伝などと発言した者の正体はわからないのですが、もし組織的にそれを指示した場合、この団体は法令に抵触する恐れがあります。

 『国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律』の第二条の三の基本理念では『関連事業者、大学その他の研究機関及び医師その他の医療関係者の連携の強化等により、我が国の高度な技術を活用し、かつ、我が国における医療の需要にきめ細かく対応した先進的な医療機器が創出されるようにすること。』と規定されています。

 同法第五条の医師等の責務では『医師その他の医療関係者は、国が講ずる医療機器の研究開発及び普及の促進に関する施策に協力するよう努めなければならない。』と規定されています。

 すなわち、医療従事者は医療機器の研究開発促進に協力するよう努める義務があり、その努力のためには関連事業者との協力が必要であり、その結果として先進的な医療機器が創出されるということになります。

 医工連携における関連事業者、すなわち企業と連携することは利益相反や私利私欲ということではなく、法に基づく活動であると言えます。

国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律




利益相反非該当

 学会等の発表スライドには『利益相反』のページを設けるように指示されることが多くあります。

 利益相反とは何か、各学会でも定義がバラバラですが、ユーザーや研究者として公平公正に評価した研究内容であるのか、利害関係者から金員を受け取っていてバイアスが掛かっている可能性があるのか、といったことだと思います。

 基準を明示している団体では、年間何万円以上の研究費や講師料を貰った、株券を何%以上保有しているなど数値で示す場合もあります。

 色々な基準がありますが、企業に属する者が、自社の研究開発については発表するとき、利益相反には該当しないことが多いです。
 労働対価として会社から給与等を貰うのは当然のことですし、製品開発などが生業である企業が、そこから利益を生み出せなければ企業たる価値がありません。

 企業の本質には、利潤追求が伴いますので、企業イコール金儲けという考え方は、基本的には企業の存在意義であるので問題視されることではありません。




儲からなければ意味がない

 医工連携において、企業が儲けを出すことが『悪』という指摘を受ける中で、国の施策は反対方向を向いていると言えます。

 2013年、当時の首相である安倍晋三氏が掲げた日本再興戦略の中では、医療を産業と捉えていこうという内容が盛り込まれています。

 利益が出れば企業は商売を続ける、利益が出ない製品は消えていくという市場原理に基づけば、今年開発された製品を10年後も入手できるようにするためには、利益が出る商品である必要があります。

 開発に関わることと、対価を貰う事は別だという考え方もありますが、以前ジョンソン&ジョンソンの幹部の講演を聴いた際には『良いアイディアや情報には相応の対価を払って当然』という話をしていました。
 世界中で使われるデバイスで同社は大きな売上を上げていますが、その一部は発案者である医師らに還元されています。

 対価を貰った医師が、いい加減な医療を提供するという訳ではないので、医療の質に悪影響はないと考えられます。

 開発に関わった製品を積極的に使用するということについては議論が必要ですが、少なくとも何らかの課題を解決できる製品であるから開発された物なので、自身が開発した製品が自院でも使われることに違和感がないという人も多く居ます。

 筆者が10年以上前に事業化したある商品も、いまだに利益が出ているようで商品として販売されています。医療従事者が手作業で配っていては10年も続かないと思いますが、企業の力を活用する意義がここにあると実感します。